【ネタバレ感想】『マザー!』一体何が起きているのか?そのストーリーを解説
※ネタバレあり※
公開中止の問題作
日本での劇場公開は見送られた作品です。日本人にはほとんど馴染みの無いテーマだったので、良い興行成績は期待できなかったのではないでしょうか。賢明な判断な気がします(笑)。
非常に奇々怪々なストーリーで一見ちんぷんかんぷんな映画ですが、一体何を描いていたのでしょうか。
この映画の正体
この映画の元ネタはズバリ聖書です。聖書の創世記の物語を独自に表現したブラックユーモアあふれる作品となっています。言ってしまえばちょっと変わった再現VTRみたいなものですね。
この映画に出てくるあらゆるものが、聖書に登場するもののメタファーとなっており、映画のストーリーも聖書になぞらえたものになっています。
監督のインタビューなどをもとに当てはめていくと・・・
主人公→マザーアース
主人公の夫→神
突然やってきた中年の男→アダム
中年男の妻→イブ
兄→カイン
弟→アベル
赤ん坊→イエス・キリスト
そのほかの大勢→信者
主人公の住む家→この世界そのもの
このようになります。これを踏まえた上で映画を見ると大筋がつかめてくると思います。
聖書の世界を完全再現
映画の後半からはかなりブッ飛んだ展開に突入しますが、聖書のストーリーだと知っているとコントを見ているみたいで面白かったですね。私もこの映画のモチーフが聖書だと途中から薄々気付いていましたが、見返してみるとかなり細かく再現されています。
自らの家(世界)を住みやすいものにするために日々手を加える主人公。そこへ突然中年男(アダム)と中年女(イブ)が現れ、傍若無人にふるまい始めます。
そして警告を無視した結果、夫(神)の大切にしている宝石を壊してしまいます。これが聖書で言う「原罪」にあたりますね。そして追い払われた2人が直後に行為に及んでいるという点も印象的です。
さらに中年男の息子たち(カインとアベル)が現れ、家が殺人現場に早変わりします。これは人類最初の殺人の再現ですね。
そして死んだ弟を弔うために大量の客が家に押し寄せ、家の中をめちゃくちゃにし始めます。
ちなみに私はこのあたりで物語の構造についてピンときました。少し頭のオカシイ人たちがどんどん現れるので、明らかに普通の話ではなくなってきています。序盤は胸糞悪い系の話かと思っていましたが、様相がどんどん変わっていきます。
目立つところしか触れていませんが、書き出してみると本当に聖書そのまんまって感じですね。最初から最後まで不安を煽るような演出が満載で、見応えがありました
ラストシーンの意味とは
物語の終盤、主人公の家(この世界)は押し寄せる大衆によって破壊されてしまいます。さらには武装した兵隊なども出てきます。ここは今までの人間の歴史を超コンパクトに表現したものですね。
そして主人公は赤ん坊(イエス・キリスト)を出産しますが、その赤ん坊さえも殺されてしまいます。
絶望した主人公(マザーアース)は自ら家(この世界)に火を点け、すべてを破壊します。
その後、夫(神)はボロボロになった主人公の体から「愛」を取り出し、新たな妻と一緒にまた一からやり直そうとします。
焼けた家が修復されていき、主人公だったジェニファー・ローレンスではない別の女性が起き上がるところで映画は終わります。これはこの映画の冒頭と全く同じ展開ですね。
夫(神)は理想郷を求め、何度も世界を作り直していました。この映画では神が自分勝手で利己的な存在として描かれていますね。
まとめ
聖書の話を現実世界とリンクさせると、こんなにも残酷で興味深い話になってしまうんですねー。大勢の大人に主人公がボコボコにされたり、子供が惨殺されてしまったりと、ショッキングなシーンも多くありました。
問題作と呼ぶにふさわしい映画だと思いますが、とにかく細かい演出や演技がどれも印象的で素晴らしかったです。おそらくまだ私の気づいていないメタファーもたくさん含まれていると思います。
描写も内容もタブーを含んでいる映画なので、やはり賛否両論あるみたいですね。観終わったあとに誰かと語り合いたくなる作品です。